ドルビー日本支社インタビュー
ゲームに迫力と臨場感を与える立体音響テクノロジー
ゲーム開発におけるドルビーとミドルウェアの役割に迫る
プラットフォーム
導入製品
CRI・ミドルウェアのVI(ビジュアルアイデンティティ)ムービーの作曲を担当した音楽プロダクション、リバーサイドミュージック。初めてのドルビーデジタル5.1ch化を手掛けたスタッフに、その感想を聞いてみた。
司会: 今回、VIムービーの音楽について5.1ch化を担当して頂きましたが、いかがでしたか?
上松: 実は、5.1ch化って、初めての経験だったんですよ。何もかも分からないことばかりで…。今まで自分が培った常識を超え、「平面的な音作り」ではなく「立体的な音作り」をしなくてはいけない。未経験のことへのチャレンジですから不安も大きかったのですが、いざやってみると非常にエキサイティングで楽しい工程でした。
藤田: 立体音響という全く新しい要素が音作りに加わるわけですから、音の可能性がググッと広がりましたね。
上松: 音楽を作っている者にとって、新しい創造性を掻き立ててくれる、素晴らしい要素だと思います。今回、ドルビーさんの社内にあるスタジオでいろいろと技術サポートをして頂きながら作業したわけですが、自分の頭のなかでシミュレーションしている音の配置や流れを、現実にモニターしながら調整を重ねていく過程は、本当に楽しいものでした。
司会: VIムービーの音楽を作曲・MIXするうえで、こだわったポイントを教えて下さい。
上松: 曲の雰囲気に関しては、CRIさんが大切にされている「高品質感」というものを念頭に、壮大でスペイシーな感じにしました。また、作曲の段階で、5.1ch化を意識した音作りも心がけました。音楽部分とSE部分をなるべく分けて、あえてお互いが溶け込まないような作り方をしています。映画的な手法を試してみたいと思ったので、ロゴが飛んでくるシーンの位置感、臨場感が出るように工夫しました。
司会: なるほど。やはり、従来のステレオMIXの場合とは勝手が違いましたか?
藤田: ステレオMIXに関してはある程度はノウハウが固まっているので自分の思い通りに操れるのですが、5.1chになると、どの音をどこに置くとどうなるのか、といったことが全く分からないところからのスタートでした。正直に言って手探りでの作業でした。さらにノウハウを溜めていき、リバーサイドミュージックとして「音楽における5.1chミックスというのはこういうものだ!」というものを見つけていきたいと思います。マルチチャンネルによるサラウンドというのは無限の可能性を秘めていると思います。
今回、MIX作業を行ったドルビー内のスタジオ
上松: 映画では、すでにかなり前からサラウンドが当たり前のものになっていましたが、どちらかというと、音楽というよりはSEに重きを置いたアプローチだと思います。私自身、マルチチャンネルというのは、SEのためのものだとずっと思い込んでいました。
司会: 現在でも、マルチチャンネルを生かした演出の主流は、やはりSEですよね。
上松: はい。でも、実は音楽であっても、楽器のパートごとに鳴る位置を変えてみたり、実はいろいろなアプローチがあるはずだと思います。結局、それを聞いている人が心地よく感じてくれるものであればいいのですから、実験的なものも含め、いろいろな新しい技法に挑戦してみたいですね。
藤田: そういう点では、今までのステレオMIXの常識やノウハウを一度スッパリと忘れて、マルチチャンネル向けのMIXというものを新たに模索するくらいの気概が必要ですね。
司会: なるほど…。マルチチャンネル向けのMIXのニーズというのは、増えてきているのでしょうか?
藤田: そうですね、だんだん増えてきていると思います。ただ、音楽に関して言うとアーティストのLIVE向けというのが主流ですね。臨場感が出やすいですから。マスタリングとなると、まだまだ例は少ないと思います。
上松: ゲームメーカーさんは非常に興味は持っているみたいで、「5.1ch対応をやりたい」という話はよく聞きます。映像的にはハードが世代交代するごとにリアルになってきていますが、そろそろ、映像だけでなく音響的にもリアルなものを追求する段階に来ているはずですからね。
藤田: 我々もマルチチャンネル対応の音楽というのは積極的に作っていきたいと思っていますから、もっともっと、それに対応したタイトルが増えていって欲しいと思っています。
司会: 上松さんには、Sofdec向けデモムービーの一つ「機神 -Kishin-」の音楽も作って頂きましたが…。
上松: ムービーのスピード感や重厚感をひきたたせるために、音楽というのはとても重要な役割を果たすものだと思います。その点を意識しながら「機神」というビジュアルのコンセプトから受け取った質感を具現化するために、生(なま)楽器を多用するアプローチを採りました。
司会: やっぱり生楽器って、迫力と説得力が違いますよね?
上松: そうですね。もちろん、生楽器を使わない方が良い場合というのもありますが、今回はふんだんに採り入れてみました。個人的にも好きな方向性の曲ですね。最近手掛けたもののなかでは、マイベスト10に入る出来の曲に仕上がっていると思います。
司会: そう言って頂けると、こちらもお願いした甲斐があります(笑)。
上松: これからも、ゲームをはじめ、CMや映画、アーティストなど、いろいろな音楽に挑戦していきたいと思いますが、常にクライアントの予想や要望を良い意味で裏切るかたちで、応えていければと思っています。特に、ゲーム音楽で面白いのはインタラクティブな映像メディアに音を付けられるという点です。その世界観やシチュエーションの意味を理解し、そこに私自身のオリジナリティを加味して音楽を作っていく。他のメディアにはない、エキサイティングなアプローチだと思います。
藤田: そうですね、ゲーム関連のお仕事は、もっと数多く手掛けていきたいですね。
司会: CRIのデモディスクは多くのゲーム開発者に見て頂いていますから、きっとその音楽に興味を持たれる方もいらっしゃると思います。そのときはぜひご紹介しますね(笑)!
上松: はい! それまでに、うちもマルチチャンネル向けの音作りやMIXについて、もっと経験を積んでおきますね。
司会: 本日はありがとうございました。
リバーサイドスタジオ内にて
有限会社リバーサイド・ミュージック
〒154-0002
東京都世田谷区下馬6-44-18
TEL:03-3419-0994 FAX:03-5433-8284
楽曲納品実績(一部)
ゲーム:「カナリア」「首都高バトル01」「みずいろ」「ヤミと帽子と本の旅人」等
アニメ:「おねがい☆ツインズ」「クロノクルセイド」「グリーングリーン」「ぷちぷり*ユーシィ」等
Dolby, Pro Logic, and the double-D symbol are trademarks of Dolby Laboratories.
本文中に記載されている会社名、製品名等は、各社の登録商標または商標です。
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