テクモ株式会社インタビュー
『DOA』は娘のような存在。
信頼できるミドルウェア以外は使用しない。
プラットフォーム
導入製品
CRI ADX / CRI Sofdec / CRI Movie Encode
司会: まずは、CRIのミドルウェアを採用することになった経緯について教えて下さい。
板垣: 現在のゲームソフトは、非常に重層的に重なったプログラム群によって動いているわけだけど、ゲーム開発者としては、やっぱりゲーム自体のプログラミングやコンテンツ制作に専念したいですよね。ミドルウェアやライブラリ(※)は、豊富に用意されていて選択肢が多い方が助かります。
たとえばムービーCODECや、マルチストリームのローダーなどは、信頼のおけるミドルウェアがあるんだったら、自分で作らないで使ったほうがラクですよ。その分自分達はゲーム作りに集中できるし。
ファミコンの頃とか昔は全部自前でプログラミングする時代もあったけど、今はもう違う。高性能で信頼性のある汎用技術は、積極的に使いますよ。まあCRIさんとは付き合いも長いし、信頼していますから。
板垣: ただ世間を良く見渡してみると、DCには御社の『ADX』があるということが分かって、性能テストの結果、ああいけるな、と。それですぐに採用を決定しました。DC版はほんとADXのおかげで助かりましたよ。
しかしPS2はね。2000年1月当時、そんなローダーなんてどこにもないし、だれも作ってなかった。しかたないから自分らで作りました。開発コード『ニセADX』と僕らは呼んでましたが(笑)。
松下: 『ニセADX』ですか。ひどいこというなぁ(笑)。
板垣: いやいや、御社の技術を最大限に信頼している証拠じゃないですか(笑)。
松下: でもマルチストリームシステムを、PS2の発売同時に合わせて自前で作るなんて、正気じゃないですよね。結構、大変だったんじゃないですか?
板垣: そりゃね。あんなことはもう二度とやりたくないよ。ただ、ないものは作るしかない。シームレスにシーン展開しないDOA2なんて、作りたくも遊びたくもなかったからね。
松下: もうちょっと早くPS2版のADXを開発していたら、PS2版にも使われていたのに…、とついつい悔やんでしまいますね。
板垣: ははは (笑)。あの時は「CRIのADXと勝負だ!」といって作っていましたからね(笑)。一応『ニセADX』の性能を言っておくと、SE=2ch、BGM=1ch、ゲームデータ=1ch、合計4chまでのマルチストリームを実現しましたよ。転送レートは秘密(笑)。ただ、今はPS2用にも御社のADXがリリースされたから。今の人はラクだよね。
松下: そのお話ぶりからすると、かなり苦労されたみたいですね(笑)。
板垣: ADX作ってるんだから、どれくらい大変かは、松下さんが一番知ってるはずだけど?(笑)
松下: (笑)
板垣: 一番面倒だったのは、DVDドライブ性能の検分から始めなきゃいけなかったことですね。
マルチストリームローダーの総合性能は、ドライブの転送性能とバッファ制御するIOPで走らせるアルゴリズム、あとバッファの容量等等等…に依存するから、まずこれらのデバイスがカタログスペックどおり動いてくれるのか計測することから始めました。数十台の実機でベンチマークプログラムを走らせて、ドライブ性能を様々な観点から実測したんですよ。
松下: あの時期にそこまでやったんですか(笑)。
板垣: やると決めたらうちはやるんで。というかやらないとゲームが動かない(笑)。それでその実測データを元にアルゴリズムを最適化していくわけだけど、外周内周の関係とか、複数搭載されているCPUの仕事の割り振りとか、その他もろもろ。まあ技術者としては楽しいんだけど、もうああいうことはやりたくないよね。
ちなみに当時CDベースのPS2ゲームが多かったのに、うちがDVDを採用したのは、DVDの方がCDよりデータ転送性能が高かったからという理由からなんですよ。
松下: なるほど。
司会: 『DEAD OR ALIVE 3』や『DEAD OR ALIVE Xtreme Beach Volleyball』でもCRIのミドルウェアを採用していただきましたが、採用検討の際は、他社技術との比較はされましたか?
板垣: 『DEAD OR ALIVE 3』の時点ではマルチストリームのライブラリに関しては、他には無かったからね。比較のしようが無い。
松下: でも、最近はちらほらと出てきているみたいで、展示会等でときどき見かけるようになってきましたよ。どれくらいのクオリティのものかはよく知らないのですが…。
板垣: マルチストリームのシステムを作るのはそれほどラクじゃないからね。PS2版『DOA2』に関して自分たちが誇りに思っていることの一つは、3ヶ月という短い期間で『ニセADX』を作り上げたってこと。でも、その点はだれも褒めてくれないんだよなぁ(笑)。
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