マルチプラットフォーム開発の難しさを
『戦国BASARA2 英雄外伝』開発チームに聞きました
プラットフォーム
導入製品
CRI ADX / CRI Sofdec
———本シリーズでは、口パク(リップシンク)はやっていませんよね?
小林: そうですね。確かにフェイシャルをやりたいというデザイナーは多いですし、最近のゲームだと、やっていないゲームの方が少ないとは思います。でも、そこの作業をやるくらいなら、もっと別の所に力を割きたいというのが僕の方針です。体は動いてますし、かなり喋るので、遊ばれる方によっては口が動いているように思ってくれる人もいると思っています。もちろん見ている人はやっぱり見ていると思いますけどね。「今時フェイシャルくらいはやるべきだ」、「次の作品ではやりたい」、という声ももちろんありますが、毎回僕がやめようという話をしています。
※フェイシャル・・・顔の表情のこと。
———どのあたりが難しいところですか?
小林: まずはモデリングの作業があって、動かす作業もあって、サウンドを合わせて、、、全体的な作業の負担がプログラマーからデザイナーまでかかっていきますよね。
高野: 僕らにとって一番大事なのはゲームの全体的な世界観とか楽しさで、そこで例えば芝居などを作りこんでいくと、その分作業も増えるし、そこに修正をかけていくとまた大変です。そういう細かいところを作りこんでいくよりは全体的に良いものに、楽しく遊べるゲームにしていこうということでやっています。
———ボイスの数になるとどのくらいあるものでしょうか?
浜: 正確にはお答えできませんが、おそらく1万数千個というレベルだと思います。
———それは多いですね!大量のデータを扱うに当たって工夫している点はありますか?
島守: データのディスク上の配置に関しては、ロードするタイミングを考えながら、各データ同士がレイアウト的に近くなるように気を配って配置しています。デモに入る前の装備画面などはローディングが激しくなるので、特に気をつけてデータ配置をしましたね。あとはデータ容量的には少し勿体無いのですが、どうしてもロード中にBGM再生が途切れてしまう場面があったので、同じ曲をディスク上の別の位置に再配置したものもあります。ファイル数は膨大なので、スタッフ全員が把握するのは不可能で、ほとんど浜だけが確認して把握している感じですね。
———最近、そういうお声を耳にすることが多く、CRIでも既に基礎研究を始めています。具体的にはディスクのシーク回数を減らすために、データをディスク上のどこに配置するのが良いかを簡単にコントロールする技術や、ディスク上のファイルレイアウトの最適化を自動化する技術などです。
島守: 情報を楽しみにしています。
———今回は「CRI ADX」と「CRI Sofdec」を採用いただきましたが、ゲームのどんな部分に使用されたのでしょうか?
島守: ムービー再生にSofdecを、BGMやSE・ボイス再生にADXを使いました。データの読み込み系もADXを使いました。
浜: ボイスに関しては「CRI ADX」のAHXコーデック(※1)を使いました。ボイスはかなりの分量があったので、ADXコーデックだとディスクに納まりきらなかったからです。データ容量と音質のバランス調整という面でも、AHXの方がボイスに適していました。ただし、AHXコーデックはモノラルなので、声の広がりを表現したりエフェクトをかけたりしたいものは、ボイスでもステレオ対応のADXコーデックを使っています。
高野: 実は、AHXコーデックと声質的に相性の悪い役者さんもいましたね。
———エンコーダーのパラメータ等の調整で吸収できる場合が多いので、標準のプリセット設定で思い通りにならない場合はぜひご相談ください。
(※1)音声再生のミドルウェア「CRI ADX」には、ADXとAHXという2つのコーデックがあります。ADXはBGMに、AHXはボイスに最適化した音質となっています。圧縮率はADXが1/4程度、AHXが1/6~1/10程度です。
———次はSofdecについて伺います。エンコードしたデータと元のデータを比べて、Sofdecの画質はどうですか?
小林: 当然ではありますが、画質で言うとやはり圧縮前の元データと比べると変わりますね。かといって圧縮しないわけにはいかないので、できるだけ素材の持ち味を損なわないようにしたいと思っています。
———ムービーはエンコードの仕方でかなりクオリティに差が出てきます。CRIではエンコードのノウハウをなるべくツールに反映していますが、やはり職人芸でないと実現できない事も多いのが実情です。画質にお困りのときは、エンコードを承ることもできますので、ぜひご相談いただければと思います。例えば、CRIでは「分割エンコード」という手法を使ったりします。場面の特性に合わせてムービーを複数に分割して、その場面毎に最適な設定でエンコードし、最終的にそれらをつなぎ合わせて1つのSofdecデータにして再生する、というものです。
小林: なるほど、それはぜひ試してみたいですね。
———ADX、Sofdecとも、WiiとPS2両方で使っていただいていると思いますが、音声データ(ADXデータ)と動画データ(Sofdecデータ)は両機種ともに同一のものを収録されているのでしょうか?
島守: ボイスやBGMなどのADXデータは両機種で使っています。おかげで作業がとても楽でした。Sofdecデータについては、素材のムービー自体は同じですが、Wii、PS2向けに最適なパラメータでエンコードしなおしました。
———本作では「Now Loading」表示がないですよね。
小林: なるべくロードは短く、と心がけています。
島守: 実は、元々ロードが長いタイトルなので、待たされている感はなるべく無くそうと『BASARA2』から演出が入るようにしました。根本的な解決ではありませんが。それでも、プログラム的にも改善しながらなるべくロードは短くなるように努力しています。
———PS2よりWiiの方が読み込みが速い感じがしますね。
島守: 移植時にデータ自体が多少小さくなったというのはありますが、ほぼ同じものを使っているので、ハードのパワーが大きいと思いますね。実はWiiだと演出はあんなに必要ないんです。シーク音を聞いてもらうと分かりますが、演出の途中でロードし終わってるんです。
———Wiiではワイドテレビ対応が難しいという声を多く聞きます。当社ではSofdecの関連ミドルウェアである「シネマスタジオ」という製品をWii向けにご用意し、Wiiのワイドテレビ対応を簡単にする仕組みを入れていますが、本作ではどうされましたか?
小林: 戦国BASARAはもともとアスペクト比(画面の縦横比)が4:3のゲームであることもあり、ワイドテレビ対応については、最初の時点でやらないと決めました。なので、幸い特にワイドテレビ対応に困ったということはありませんでした。
———シリーズではずっとADXとSofdecを採用いただいていますね。
島守: はい。個人的な経験としては『BASARA1』で初めてADXとSofdecを使いました。それまではプラットフォームで通常用意されている標準のものを使う事が多かったです。『BASARA1』は開発期間が短くて、手っ取り早く大量のボイスを高音質で再生するために、ADXを使うことにしたんです。既にカプコン社内では採用実績が沢山あったこともあり、採用に至りました。
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