導入事例

謎惑館~音の間に間に~ イメージ画像

外部との連携で技術的困難を乗り越えた!「オト」が主役の『謎惑館』開発秘話

プラットフォーム

ニンテンドー3DS

導入製品

CRI ADX2

2011年8月30日インタビュー
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参加者プロフィール

カプコン

岡田 信弥 氏(サウンドマネージャー)

北村 一樹 氏(サウンドデザイナー)

野中 大輔 氏(プログラマー)

小島 健二 氏(サウンドプログラマー)

寺畑 真吾 氏(サウンドプログラマー)

聞き手

土本 学(イード インサイド編集長)

CRI・ミドルウェア

立体音響とニンテンドー3DSの各種機能をふんだんに使ったアドベンチャーゲーム。「謎惑館」と呼ばれる館の各部屋が舞台となり、ヘッドフォンで味わうことのできる立体音響と、3DSならではの新鮮な操作感や秀逸なシナリオが部屋によって様々なコンセプトとモチーフで楽しめる。カプコンならではのユーモアの効いた演出にも注目。好評発売中。

———まず本作の特長を教えていただけますでしょうか 。

岡田:音声認識やジャイロセンサーなどニンテンドー3DSの機能をふんだんに使った遊びを詰め込んだタイトルで、「謎惑館(なぞわくやかた)」という館から脱出するために様々な部屋を冒険するというゲームです。効果音やボイスなどの立体音響を頼りにゲームを進めていくというのが大きな特長です。

岡田氏

岡田氏

———サウンドが中心的な役割を果たすというのは珍しいですね。

岡田:カプコンの中でもサウンドがメインとなるゲームは少ないですね。そういう意味ではサウンドのスタッフとしては楽しい開発となりました。もちろん苦労も多いタイトルだったんですが・・・(一同笑い)。

———最初に企画を聞いた時の印象はどうでしたか?

北村:私の方で、先行してサウンド制作室で立体音響を研究していて、いつかゲームで使えれば面白いな、と考えていたんです。そんな時に中井ディレクターから「立体音響をやりたい」という話があって、思ったより早くその時が来たな、と(笑)。

岡田:中井ディレクターはニンテンドーDSの頃から音声認識を使ったゲームを作りたいと考えていて、ようやくニンテンドー3DSになって実現できたんです。

———なるほど。北村さんは昔から立体音響の研究をやっていたと聞きました。

北村:はい、大学の時にバイノーラル録音をやっていました。ホロフォニクスという技術が有名になって、ゲームでできたら絶対面白いだろうなあと思い、どうにかしてゲームに採用できないかと考えていました。

———今回も色々な方式を試したということでしたが

北村:そうですね。立体音響でも幾つかの技術があり、調べてデモを見て、というのを繰り返しました。その中でもオトフォニクス(The Otophonics Factory:http://otophonics.com/)という技術がクオリティの面で優れていて、担当の方とも非常に良いコミュニケーションを取ることができ、本タイトルへの採用を决めました。

———オトフォニクスという技術をもう少し教えていただけないでしょうか?




岡田:特殊なマイクを使用して録音し、特殊な加工をすることで音が立体的に聞こえるようになるんですが、その技術の詳細についてはブラックボックスになっていて私達にも分からないんです。ただ、立体音響の録音に関するノウハウは色々と貯めることができました。

北村:それからオトフォニクスと並行してバイノーラルも研究していまして、それも調査をしていった結果、アーニス・サウンド・テクノロジーズ(http://www.arns.com/)さんのリアルタイムバイノーラルを採用することになりました。オトフォニクスは一度収録すると音の位置は固定ですが、リアルタイムバイノーラルはゲーム中にプレイヤーの位置によってリアルタイムに立体音響をレンダリングすることができます。周囲を見渡したり移動したりするようなシーンで状況に応じて音の位置を変化させたい場面で使用しています。

北村氏

北村氏

岡田:バイノーラルではHRTF(頭部伝達関数)の演算パターンにより、人によって聞こえ方に差が出るので、幾つかのパターンの中から自分に最適なものをオプション画面で選択できるようにしています。

———リアルタイムに立体音響を実現することもできるんですね

野中:はい、でもかなりの処理能力を使います。本タイトルの仕様では同時2音をレンダリングするのが限界です。

———オトフォニクスの録音はかなり大変だったと伺いました

岡田:大変でしたね・・・。録音してから立体音響を聞けるまでにかなり時間がかかる、ということがありました。つまり、どんな風に録音されているか分からないまま収録しないといけないということです。さすがにこれでは立体感のディレクションに支障が出るので、簡易チェック用にバイノーラル録音も同時に行って、オトフォニクスに近いものを収録時に聞きながら調整をしました。

北村:オトフォニクスはその場の空気感をまるごと録音するようなものです。ですので、広い部屋の音は広い録音ブースで、狭い部屋の音は狭い録音ブースでと最初は考えました。ただ、広すぎる部屋だとリバーブが効き過ぎたりして、それは後から取り除けないので、なるべくリバーブをかけずに収録して、後で必要なら追加するという手法を取りました。また、立体音響は音を重ねると立体感が損なわれてしまうこともわかりました。ですので複数回録音して最後に重ねる、という方法が取れないため、シーンに必要なすべての音を一発録りする必要がありました。

岡田:立体音響で音を動かす場合は、音源を動かさないといけません。声優さんにも録音ブースの中で動きながら喋ってもらう必要があります。声がOKでも、動きがNGとか、声も動きもOKでも、足首の骨が「パキッ」と鳴ってNGになったり(笑)。すべてOKでないと駄目なので、通常の録音と比べると3倍はかかったんじゃないかと思います。しかも沢山の声優の方に参加いただいたので骨が折れました。

岡田:また、非現実音に関しても、事前に仕込んだ音を用意しておいて、スピーカーから鳴らしているのを動かして録音しました。複数スピーカーとなると、息を合わせるのも一苦労でしたね。

———オトフォニクスを録音するマイクの周りに5.1chの環境を用意して鳴らす、といった手法も有り得そうですね

北村:そうですね、その方法は実際に使っています。正確には通常の5chに加えて、頭の上の3chと、可動式の1chの9ch環境です。ストーリーの合間のイベントシーンなんかでは、この手法で録音したものを使用しています。

■サウンドがゲーム開発の中心に

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