導入事例

ソウルキャリバーV イメージ画像

世界観も開発体制も一新!『ソウルキャリバーV』世界一の武器格闘ゲームであり続けるための挑戦

プラットフォーム

PlayStation 3

導入製品

CRI ADX2 / CRI Sofdec2

2012年1月30日インタビュー

———偶然で生まれたサウンドもありましたか?

矢野:『V』ではキャラクターの体力が減ると心拍音が鳴るんです。これは自分がインナーイヤホンを装着してゲームを遊んでいた時、自分の心拍音が聞こえてきたのがヒントになりました。それで通常の心拍音より、少し速い鼓動で鳴らせば、プレイヤーの緊張感も高まるんじゃないかと思ったんですよ。さらにキャラクターの距離で音量が変わるようにもしました。これらを「ADX2」の「AISAC(アイザック)(※)」機能を使って調整したところ、1日で実現できました。

(※) 「AISAC(アイザック)」…「ADX2」の機能。サウンドの音量やエフェクト、ピッチなどのパラメータを状況によって変化させ、インタラクティブなサウンドを作成できる機能。

森:実は、僕は心拍音が実装されたのは知らなかったんです(笑)。それで初めて体験した時は驚きました。こういう細かいネタは、プログラマーによっては敬遠されて、先延ばしになりがちなんですね。それがキャラクター間の距離データを提示するだけで、いつの間にか実現されていたので、非常に良かったです。

矢野:もともと縄張りを侵害された時の音の変化は『ソウル』シリーズを通しての自分の課題でもありました。それがこんな風に実現できたのは嬉しかったですね。他にも体力が減った時の呼吸音なども、簡単に設定できました。剣を振るう時に体力が少ないと「やっ!」「えいっ!」などの掛け声の後に、一瞬「すっ」と息継ぎをする音を組み込んだんですよ。

中鶴:『ゲーム内の臨場感を出したかったんです。もっとも、純粋な格闘ゲームとして考えれば、これらは必ずしも必須とは言えないんですよ。それでも臨場感を考えれば、疲れている時の表現を盛り込みたい。プレイヤーの体力が減った時に動きを鈍くしたり、といったことはゲーム上難しいので、モーションで表現できなくても、サウンドだけで何かできないか。まだまだ、いろいろあると思います。それをプログラマーさんの手をわずらわせずに、自分たちでできるようになったのは嬉しいですね。

———サウンドとボイスの総量はどれくらいですか?

船田:ゲーム中のボイスデータは日本語・英語あわせて16,000個くらいです。

矢野:SEは武器関連が約700個、足音は複数の床素材や靴の種類があって400個。衣装やアクセサリーなど合わせると、全体で2,000個くらいですね。武器も剣で攻撃する時と柄で攻撃する時は音が違いますし、必殺技などもあって、かなりの数になります。

サウンドの船田氏

サウンドの船田氏

中鶴:素材レベルで2,000個、それをピッチなどを変えることで5倍にも10倍にも多彩に見せています。これらに加えてボイスやナレーションなどが被さってきます。最大同時発音数は42音です。

———オプションのSE設定でユーザーが効果音のニュアンスを「リアル」、「デフォルメ」というパラメータで数段階に調整できる機能は面白いですね

矢野:実は同じキュー(※)の中に2つのサウンドデータが入っていて、ミックスバランスで調整しています。「AISAC」のパラメータでローパスフィルター、ハイパスフィルター、ボリュームのバランスを調整しているだけなので、かなり楽にできました。

(※)「キュー」…「ADX2」の概念で、どのサウンドをどのように再生するか、を予め設定したデータ。プログラマーはどのキューを再生するかを指定するだけで、サウンドデザイナーが設定した音を簡単に再生できる。

『V』で実際に使われた「ADX2」ツールの設定画面の一部。 下部のグラフでフィルターを調整している

『V』で実際に使われた「ADX2」ツールの設定画面の一部。 下部のグラフでフィルターを調整している

中鶴:もともと効果音の好みは世界中で違うんです。映画などでも、ハリウッドの効果音は鋭くて細いのですが、日本では時代劇の影響で「ぶしゅっっっ!」という鈍くて太い音が好まれます。これまでは間を取るか、作り手の押しつけが多かったのですが、海外ファンにも配慮しようと言うことで、お好みで調整できるようにしました。

夛湖:実は海外でも日本語のボイスで遊びたいというファンはかなりいるんですよ。取材などでも必ず訊かれるポイントです。だったら、そこも将来的に遊びにできればいいなと。今はまだプリセットされた効果音やボイスを選ぶ段階ですが、やがて自分たちで、そこの部分もクリエイトできるようになっていくと思います。今回もCRIさんにはかなり無茶を言わせてもらいましたが、対応いただいて感謝しています。

■リアルタイムに変化するサウンドがもたらす効果

———他にも「ADX2」を使って、何か面白い表現をされた点があれば、教えてください

矢野:ダメージの強さで武器の音を変えました。ダメージが小さい時は高域の成分を少なくして鈍めの音にして、ダメージが大きい時は高域の成分を強めて金属的な音にしました。これらも「AISAC」で調整しています。

中鶴:他には、音のボリュームを優先度でコントロールして、重要な音を目立たせる「REACT(リアクト)」という機能を使って、ゲームの全体的な音量をコントロールしました。これまでのシリーズでは、業務用の「わかりやすさ」を引きずって、どの音も最大音量で鳴らしていたきらいがありました。特にバトルの勝敗がついたシーンでは、決着音やSEやボイスや技のSEや、あれやこれやで、結果的にどんな音が鳴っているのか、よくわからない状態になっていました。それを交通整理して、その場、その場で一番大事な音がきちんと聞こえるように調節したんです。

矢野:バトル中は「REACT」を4箇所くらい設定して、音のコントロールをしました。キャラクターが水たまりに落ちた時は、水しぶきの音がはっきり聞こえるようにしたり、バトルでナレーションが再生されている時はそれ以外の音を下げたりとか、立体的なサウンドデザインができたのが良かったですね。これ以外に「AISAC」をループさせて、環境音の印象がランダムで変わるようにもしました。毎回サウンドの感触が違うというのは、臨場感をアップさせるのに効果的ですから。

爽快なサウンドが爽快なゲームを作り出す


———文字通り使い倒されていますね

矢野:ストーリーモードのローディング時に、画面に何も表示しなくても、音は鳴らしたいというオーダーが企画の方からありました。しかし、メモリ容量が厳しかったんですよ。そこで低域には戦場の音、中域には風の音、高域には異空間の音、最高域には光の音が同時に存在する1つの波形データを作りました。そして「ADX2」のオーサリングツールで読み込み、ローパスとハイパスで帯域を選んで、フィルターを切り替えて鳴らすようにしたんです。これによって1つのサウンドデータで4種類のサウンドが鳴るようにできました。これによってメモリ使用量が1/4に減ったんです。それもツールで遊んでいるうちに、できました。

夛湖:そういった変態的な使い方が弊社の特徴です(笑)。

矢野:その後ピッチやボリュームを変えるなどして、1個の波形から12個の背景音を作るなどしました(笑)。

中鶴:そこも先ほど説明した「シームレス感」の追求ですね。今までだとローディング時に無音状態になるというのは、ある意味で当たり前でした。単純な格闘ゲームだとそれでも良いのですが、せっかくストーリーモードで気持ちが高まったのに、無音状態のままだと気持ちが冷めてしまいますよね。

———ロード時間も短縮されている感じですね

森:『IV』と『V』ではキャラクターセットやロードの方法などが変わっているので、単純比較はできませんが、だいたい30%くらい短縮できています。

矢野:ロード中のBGMはオンメモリで持っています。他のBGMのアクセスがない代わりに、データを読むことに集中できました。BGMが流れることで、ロード時間の心理的な軽減効果も達成できました。

———他にインタラクティブサウンドで面白い使い方をされたそうですね

中鶴:オンラインモードで、ロビー→キャラクター選択→アイテム選択→ステージ選択とプレイヤーの状況が変わっていくにつれて、BGMをだんだんと盛り上げていく演出を作りたかったんです。これを「ADAMS(アダムス)(※)」の複数トラックを動的に切り替える機能で実現しました。

(※)「ADAMS(アダムス)」…「ADX2」の機能。WAVファイル(録音した音声データ)に拍(リズム)の概念を取り入れることで、プレイヤーやゲームの状況に応じて音楽の切り替えや音の重ね合わせなどを自然に行うことができる。

———なるほど

中鶴:これまでのように、決まったサウンドをループで再生するのは、一世代前のやり方かもしれません。状況に応じてリアルタイムにサウンドを変えていくやり方は、これから必須になると思います。今回も試験的に入れてみました。「ADAMS」をはじめ技術的土壌が揃ってきたので、それらをどんな風に使うか、クリエイターの腕の見せ所ですね。

■密なコミュニケーションがもたらした安心感

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