ドルビー日本支社インタビュー
ゲームに迫力と臨場感を与える立体音響テクノロジー
ゲーム開発におけるドルビーとミドルウェアの役割に迫る
プラットフォーム
導入製品
司会: まずは、昨今のゲームソフトのドルビー対応状況について簡単に教えて下さい。
ジョン: はい。ご存知の通り、これまでドルビーは映画業界向けにサラウンド技術を開発・提供してきました。1993年頃、あるゲーム会社から「ゲーム上でドルビーサラウンドを取り入れるにはどうしたら良いか?」という連絡がありまして、それをきっかけにゲームのサポートを本格的に開始しました。
記念すべき、初のドルビーに対応したゲームは「KING ARTHUR'S WORLD」、日本ではジャレコから「ロイヤルコンクエスト」というタイトルで発売されたスーパーファミコン用ソフトでした。
押見: そんな以前から対応タイトルがあったんですね、驚きました。ゲームのジャンルによって、ドルビーへの対応状況にばらつきはあるものですか?
ジョン: 基本的には、ジャンルを問わずドルビー対応タイトルは増えつづけています。もちろんジャンルごとにサラウンドMIXのアプローチは異なってきますし、サラウンド自体の活用手法は違いますけどね。
押見: と言うと…?
ジョン: 例えば、FPS(First Person-view Shooting = 一人称視点シューティングゲーム)系のタイトルでは、非常に直感的で解りやすいサラウンドが採用されています。敵や対象物の位置や動きに合わせて音声をパンニング出来るのは大きいですよね。画面上では見えなくても背後に忍び寄る敵を効果音のパンニングで表現したり。サラウンドというと演出のためだけと思われがちですが、この場合、ゲーム性に強く影響を与えることができるんです。また、ロールプレイングゲームやシミュレーションゲームでは、映画的なミックスダウン(以下、MIXと表記)のアプローチが広く採用されています。よりファンタジックで壮大な雰囲気を醸(かも)し出すことが出来るようになります。
押見: ジャンルによって、サラウンドの意味合いがかなり変わってくるわけですね。
ジョン: はい。それに、日本とアメリカでは人気ジャンルが異なっていますから、当然、ドルビーに対応したゲームの認知も変わってきます。
アメリカでは FPSの人気が絶大ですから、多くの方はドルビー対応タイトルと言うと「HALO」などのFPSタイトルを想像する方が多いです。一方、日本ではロールプレイングゲームが大人気ですから「ファイナルファンタジー」などのタイトルを想像する方が多いでしょう。もちろん、他にもレーシングゲームやスポーツゲームなど、さまざまなゲームジャンルでドルビーの技術は採用されています。
押見: ドルビーへの対応って、インタラクティブかつリアルタイムにサラウンドを実現する手法と、ムービーなどのようにあらかじめMIXをしておく「決め撃ち」のサラウンドの手法と、2種類ありますよね。どちらの手法が多いのでしょうか?
ジョン: インタラクティブな手法のほうが多いと思います。これまでの経験上、弊社でサウンドチェックをしたドルビー対応タイトルのうち、80~90%はインタラクティブな手法を用いたものです。
糸川: そういう意味では、今回、CRIさんのミドルウェアが「プロロジックII」に対応したのは大きいですね。インタラクティブなサラウンドを採り入れたタイトルがまた増えていくと思います。
押見: 演出面でとても楽しみですね。これからのタイトルに期待しています。
糸川: 最近、日本国内のゲームタイトルに「ドルビーデジタルプロロジックII」に対応したタイトルがけっこう増えてきているんですよ。つまり、ゲーム中はプロロジックIIによりインタラクティブなサラウンド環境で遊べて、ムービーシーンではドルビーデジタル5.1音響を楽しめる訳です。今回、CRIミドルウェアがこの両方に対応されたことで、今後、「ドルビーデジタルプロロジックII」対応タイトルの開発が非常にスムーズに運ぶことと思います。
ジョン: 実は、PS2上のドルビーデジタルストリーミングの扱いは、以前はあまり簡単ではなかったのですが、Sofdecのドルビーデジタル対応によってそれも解消され、ドルビーデジタルムービーシーン制作を希望する開発者にはとても便利なミドルウェアとして用いられていると思います。
押見: Sofdecがドルビーに対応したきっかけって、ゲームデベロッパー様からの「はやく対応して欲しい!」という声だったんですよね。それだけ、高いニーズがあったというわけです。
ジョン: ドルビー対応のゲームを開発したいというゲームデベロッパーは昔からたくさんありましたが、弊社からミドルウェアやツールを提供することは出来ないので歯痒い思いをしていました。結局、従来はゲームデベロッパー自身がミドルウェアやツールを自社開発して解決する必要がありましたからね。これはかなり大変なことですし、実際、限られたタイトルでしか対応できないという状況になっていました。これらのボトルネックを解決していくのが、まさにミドルウェアの役目ですね。
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