インタビュー
すばらしきこのせかい meets 救声主
「すばらしきこのせかい」の「オト」について聞いてきました
プラットフォーム
導入製品
救声主
———作っていくうえで困ったことはあったのでしょうか?
神藤: ちょっと困ったのは、ニンテンドーDS がLiteになってから、内蔵スピーカーの音圧が下がっていて…
梅津: ゲームの中でFlashをDSのポリゴンに変換して、その上にボイスを載せてるシーンがあるんですが、ちょっと音量が足りなくて、モノラル2本で音圧を上げて使ってます。「困った時にどうにかならない?」ってCRIさんにヘルプを投げたらあっという間に返事が返ってきて・・・
伊藤: 待ってましたって感じで(笑)。
梅津: Liteになって音量が若干下がりまして。今まで聞こえていたのが聞こえ辛い。DS Liteは今作の開発途中で出まして、最初はなかなか買えなかったじゃないですか。初めて手に入れてこれに開発中のロムを挿したとき、旧DSより音が小さいな、どうしようと。でもタイミング的にはリリース時こっちの方が普及しているだろうというので、こっちに対応したんですけど。
———他に音量を上げるアドバイスなどは?
伊藤: 先ほど言ったモノラル2本で上げるという方法と、どうしても音圧が下がってしまう分、エンコード前に元のデータの音圧を上げておくという、どちらかというと元の素材に手を入れるというアドバイスをしましたね。
———DSで音を作る時に想定したのは、内蔵スピーカーなのか、それともヘッドホンなのか、ヘッドホンにしても様々な形状があります。何を想定して、ケアしたのでしょうか?
石元: DSではやってないですね、Liteですね。
梅津: 内蔵のスピーカーを想定しています。どうしてもマーケティングの事を考えると、あまりヘッドホンをして遊ぶ環境というのは見つけにくくて。公共の場だと音を消されていますし。この筐体のスピーカーで、言い方は悪いですけど、それでも保てるという音声の調整を心がけています。ボイスと曲が聞こえて、その次に効果音という調整です。バトル中にボーカル入りの曲を流して、更にボイスもやたら喋るということで、何を喋ってるかも大事ですけど、一杯喋ってるという感じを優先したかったんです。そこは心がけました。ちょっと喋り過ぎかなとも思いますが(笑)。BGMがボーカルなんでバランスを取るのは大変でしたね。
石元: 曲はCDを手に入れるとメニューで聞けるという仕様になったので、バトル中に音楽を一方的に聞かせるというのはやめたんですね。ま、ちょっと下げてもいいんじゃないかなと。
———今後の音楽で目指すところはありますか?
石元: うーん、今は余り言いたくないんだけど…。もしストリーム2本で再生できれば、フィールドはアカペラだけが流れていて、戦闘になるとそこにインストが重なっていって曲が完成する。そんなのが実現できればいいですよね。
伊藤: ボーカルがモノラルでBGMがステレオであれば、クロスフェードして、できるかなと思います。両方ともステレオだと負荷的にかなりきついと思います。
梅津: 要望があるとするとやはりCPU負荷ですね。今言ったようなボーカルが流れていて、マルチストリームが出来たらありがたいですけど・・・
伊藤: なるほど。そういうサンプルも作ってみましょうかね。ボーカルとBGMを分けてマルチストリームでクロスフェードをかけて、それでCPU負荷が従来と変わらないようであれば使えますし。それはやりがいがありますね
幅: 「救声主」のコンソールツールってあるんだっけ?
伊藤: GUI版の「救声主」エンコーダーは内部でコンソール版のエンコーダーを呼び出しています。使い方の説明がないだけでEXE自体はあります。
梅津: 圧縮率はもっと上がらないですよね?
伊藤: ADXだと固定ですね。AHXの方を使うと圧縮率は上げられるんですが、逆にCPU負荷がどんどん上がっていっちゃいます。ADX自体の圧縮率を上げるということになると、コーデック担当どうですか?(笑)。
保坂: より圧縮率を上げていこうとするとADXはMP3みたいなサブバンド方式になっていく方向になるんで、そうするとCPU負荷が上がる方向になるんですね。 ADXでもっと小さくしようとすると、結局サンプリング周波数が下がって、サンプリング周波数が下がるとCPU負荷も下がるんでお得感があるんですが、コーデック自身でという話になるとCPU負荷が上がっていく方向になるんで余り向かないかなあと思います。
梅津: とりあえずADX4本、AHX6本くらい同時に再生できれば(一同笑)。
幅: 画面を出さなきゃできますね(笑)。
梅津: そうなれば僕らも完全に乗り換えますので。
梅津: あとはストリーミングはレスポンスがどうしても宜しくないので、1vで音を出したいとかなってくると、DSの開発機材のシステムを使って直接サウンドバンク叩いて音を出す方がレスポンスは良くなってしまいます。なので効果音はその方法で、BGMなどは救声主、ADXなんかを使うという流れになると思います。
救声主の図解
———「救声主」では音声をストリーミング再生しながらの、データの裏読みにも対応しているようですが、それは利用されましたか?
梅津: ええ。
神藤: メニューなんかではそうですね。
梅津: コミックイベント(前述のFlashの箇所)からフィールドに行くんですが、昔はADXを一旦とめないと話しにならんと言われたんですが、ある時、ADXを再生しながらフィールドに移れると聞いたので使ってます。
伊藤: 恐らくそれはマルチスレッドを使って、メインが重くなっても、デコードは常に1v毎に行うという方式にしてもらったと思います。多分それでデータを読みながらでも、音楽再生ができるようになったという流れだと思います。
梅津: セーブ回りのアクセスだけはとめるという感じですね。
伊藤: セーブするときはROMカートリッジからのストリーミングを止める必要があるんです。リードバッファを大きく用意しておけば、再生しながらのセーブも可能になると思いますが、使えるメモリにも制約がありますからね。
梅津: 再生したくても止めざるを得なかった場所はセーブ周りのアクセスだけですね。
———あと「救声主」への要望があれば教えてください。
梅津: あとはシームレス連結再生ができれば・・・。
伊藤: それは対応してない部分ですね。
保坂: ライブラリサイズをなるべく減らそうということで削除された部分なんですね。
梅津: やると重くなっちゃう?
伊藤: それはないと思います。ただライブラリサイズが大きくなるので、その意味で影響はありますね。
梅津: この『すばらしきこのせかい』に関して要望は全て投げて、応えていただいたので、そのくらいですかね。
伊藤: ぜひ今度はボイスにも使って欲しいですね、そのためにはCPU負荷を下げるということですね。
梅津: ええ。ぜひ使わせていただきたい(笑)。
伊藤: やはりCPU負荷ですね。AHXがアクションゲームで使われるというのは社内的にも、それはないだろうというのがあって、最近ではアドベンチャーゲームに使われるというのはあるんですけど。
保坂: ADXくらいの負荷でも厳しい感じですかね。ADXとDSの開発機材のシステムのADPCMって負荷には差があるんでしたっけ?
梅津: トータルではほぼ一緒くらいだと思います。
幅: 僕らはゲームを作ってるわけじゃないので、こんなんじゃ使い難いよとか、こんなのがあれば便利だって言って貰えた方が進歩があるんだろうと思います。ミドルウェアの進化って難しくて、ニーズとシーズという言い方もしますが、実現可能でも使われない技術ってのは山ほどあって、やはりお客さんから無理難題を言って頂けた方が、その時に進化ってのはあると思いますね。
主人公たちに待ち受ける運命
独特なゲームシステム
———据え置きの音の作りと携帯機向けの音の作りは重なっていく流れなんでしょうか?
梅津: 今回のBGMは少し違ってきますが、どうしてもDSは音量が小さくて、普通のテレビと比べると全然聞こえてこないので、そこで抜ける音ということだけですね。とりあえず聞こえないことにはという話なんで(笑)。そんなにいいスピーカーではないので、バランスでどこまで持っていくのか、悩んで悩んで、これでいいのかなという所が難しいですかね。
———最後に読者の方にコメントを。まずはゲームを遊ぶプレイヤーの方に。
梅津: 声優さんにもこだわって、音声も楽しめるものになりました! がんばって作りましたので、がんばって楽しんでください。
石元: 遊んでください、買ってほしいですね。
神藤: サウンドだけでなくて、企画の部分も、グラフィックの部分もそうですが、今まで無かったものを作ろうという思いが結集したソフトになったと思いますので、意外性を楽しんで欲しい、できるだけ多くの人に触って欲しいと思えるゲームに仕上がったと思います。
———続いてゲーム開発者の方に一言お願いします。
梅津: 救声主を使う際にはCRIさんに、言いたい事は必要以上に伝えていった方がお互いにいいんじゃないでしょうか(笑)。
石元: とりあえず使ってみたらいかがでしょう? ということですかね。CRIの皆さんがいるから言うんじゃないけど、僕は助かったし、他にはないものを使えたのは大きい。うちもバトル中とかゲーム中に使ったことは今まで無かったんで、「どうやってんだ?」という人もいるだろうし、まあとりあえずウチが先にやっちゃいましたけど、それでも良ければ。
(会場爆笑)
神藤: すごい上から目線だなあ(笑)。
石元: いつも一言多いですね・・・。
神藤: 救声主に関しては、開発の経過の中で“不可能を可能にする”ではないですが、僕らにとってはまさに「救世主」になったかなあと思います(笑)。
———本日は長時間、本当にありがとうございました!
※当ページでは、ゲームニュース&コミュニティサイトiNSIDEにて掲載された記事をご紹介しています。
救声主
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