インタビュー
すばらしきこのせかい meets 救声主
「すばらしきこのせかい」の「オト」について聞いてきました
プラットフォーム
導入製品
救声主
株式会社スクウェア・エニックス
神藤 辰也 氏(ディレクター)
梅津 雅義 氏(サウンドエディター)
石元 丈晴 氏(コンポーザー)
CRI・ミドルウェア
保坂 俊(研究開発部 課長)
伊藤 一彦(研究開発部 主任)
田中 孝(研究開発部 主任)
幅 朝徳(営業部 リードディレクター)
昨年からインサイドではCRI・ミドルウェアのニンテンドーDS向けミドルウェア「救声主」を何度かお伝えしてきました。今回、その最後の締めくくりとして、「救声主」を採用し、共に育ててきたといっても過言ではないスクウェア・エニックスの『すばらしきこのせかい』の開発チームに伺い、お話を聞いてきました。『すばらしきこのせかい』の音楽へのこだわりや、音楽作りについて突っ込んだ話が展開されました。ゲームプレイヤーにもゲーム開発者にも読み応え満点のインタビューになったのではないでしょうか。是非お楽しみ下さい!
———こんなに沢山の面子で押しかけてすみません(笑)。まず皆様の本作でご担当された部分を簡単に聞かせていただけないでしょうか。
神藤: 今回はディレクターをやらせて頂きました。全体的な総括と、『キングダム ハーツ』などではアニメーションをやっていたので、『すばらしきこのせかい』でもキャラクターの動きや、シナリオの監修などを担当しました。
石元: 作曲を担当した石元です。エンディング以外の曲を全部作りました。『すばらしきこのせかい』以外には『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』などを担当してきました。
梅津: 作曲、演出以外のサウンドデザインを担当しました。『すばらしきこのせかい』の開発が始まる少し前に、スクウェア・エニックスに入社しました。今回の制作はジュピターさんにお願いしていて、通常はジュピターさんのメインプログラマーの方と、CRIさんが直接やり取りをされていました。マスターアップ直前などに、緊急に確認したい事があった場合は、僕が両者の間に立って、という形でやっていきました。
———今回『すばらしきこのせかい』で一番驚かされたのはキャラクターのセリフのみならず、曲にもふんだんにボーカルが入った曲が数多く収録されていたという部分です。
神藤: そうですね。僕らがニンテンドーDS用のソフトを制作するのは今回が初めてで、かなり意気込みがありました。今までのハードとは全く違った遊び方という事もあって、システム・シナリオ・サウンド、全ての部分において斬新なもの、今までにないものにしようと追及した結果、今作が出来上がったのだと思います。サウンドに関しては、最初に石元からストリーミングをやってみたいという要望がありましたが、当時はDSのロムでストリーミング再生が可能なのか分からなかったんです。その時に「ミドルウェアをこう使えば出来ますよ」というのが梅津から提案がありまして、それならやろう、ということになりました。
———個人的にサントラを購入したのですがライナーの部分に「ムービーは諦めてサウンドを入れた」と書いてありましたね。
神藤: それは開発当初浮いていた部分でして。僕らとしては、ムービーは当然入れるつもりだったんですが、それをどう入れるかをずっと思案していました。それにストリーミングで曲を流すかどうかも、実際は宙ぶらりんな状態だったんです。そんな時、先ほどの話になりますが、サウンドから「CRIさんのミドルウェアを使って、これだけ乗りますよ」という提案があったんです。で、実際に曲を聴いてみたら、それに手ごたえがあって。これだったら曲を優先して、今までにない方向でやった方が面白いんじゃないかと感じました。当時でもDSでムービーを再生というのは既に手法としてやられていたので、ならばプリレンダムービーはいっそのことやめて曲に特化しようと、ムービー用に取っておいた容量を全て曲に使いました。ロムの容量の1/4くらいは音楽に使っていますね。
———今回の曲作りのテーマはどんなものだったのでしょうか?
石元: 強いて言えば、ないのがテーマなんじゃないですか(笑)。他の人がやってない事をやりたかったから、ボーカルが入ったということが一番大きいんじゃないですかね。僕はこれまで、特にゲームの音楽を聞いてきたわけじゃないんです。普通に音楽を聴いて、この会社に入ったから、他の方とは少しアプローチの方法が違うのかもしれません。インスト作ってもメロディが歌えるようなメロだったりするし、僕からしたら、特別なことはやったつもりはないけど、ゲームでやったら新鮮だったから反応が良かったのかなあ。普通に聞いてもCDでも楽しめるものをゲームに入れてみたって感じですかね。
———やっぱりシーケンス再生では出ないものを心がけたんですか?
石元: それはそうですね。MIDIとかで出る音なら僕じゃなくてもいいわけですから。
主人公たちに待ち受ける運命
独特なゲームシステム
———バトルから戻るたびにフィールドの曲が毎回変わりますが、それもやっぱりこだわりで?
石元: 基本的に「ファイナルファンタジー」などシリーズものでは、できないことをしたいと思っていました。「ファイナルファンタジー」って毎回同じ曲設定がされていて、同じところに同じ曲が流れるスタイルなんです。なので続編ものではない今作では、行くたびに曲が入れ替わったり、やるほどに曲が追加されていくっていう事がやってみたくて。やっぱり自分が楽しいと思うものを作ってみたかったので、今作のスタイルに賭けてみた、というのはかっこよすぎるけど。
神藤: そうですね(会場笑い)。初めの頃から色んな曲を入れたいというのはありましたね。
梅津: 基本的には同じ曲は二度連続では鳴らない仕様です。
———すごい渋谷っぽいと思いましたね。
3人: それがメインテーマなんで(会場笑い)。
神藤: 町の中を歩いていて自然に入ってくる曲だけじゃなくて、色んな所に入ったら色んな曲が入ってきてという。当初の狙い通り、ジュークボックス感を出せたんじゃないでしょうか。
———梅津さんが「救声主」をお知りになったのはどういうきっかけで?
梅津: 以前別のところで使ったことがあるんです。クオリティには絶対の信用を置いてましたし、ちょっとチェックしたらDSにも対応されているということで提案させてもらいました。
———採用するに当たって心配だった点はありましたか?
神藤: 一番気にかかったのは、「救声主」を使うことによって、どれだけの曲数を収録できるようになるか、ということでした。もし少ないようであれば、場合によっては内蔵音源を使わざるを得ないんじゃないかと思ってました。そこはやりくり上手が頑張ってくれて、結果として30曲以上入ったので良かったと思います。コーラスの乗った曲でバトルを一度体験しちゃうと、もう戻れないですよね。絶対これがいいね、ってなってしまうので、もう他のDSソフトは遊べない…いや、言いすぎた。遊べると思いますけどね(笑)。
———導入のしやすさという面ではいかがでした?
梅津: ジュピターさんに「救声主」サンプルをダウンロードしてもらって試してもらったのですが、どうだったか聞いてみると、そのプログラマーさんの口癖かもしれないですけど「全然大丈夫っすよ」みたいな感じでしたね。
神藤: 口癖ですよ(笑)。「わかんないけどいけますよー」みたいな(笑)。
梅津: まあ何もなくすんなり導入できましたね。
———「救声主」導入の決め手は「圧縮」「ストリーミング」「クオリティ」のうち、あえて挙げるとどの点だったのでしょうか?
石元: 自分はもともとモノラルでもストリーミングをやろうと思っていたんです。以前はGBAで「チェイン」(『キングダム ハーツ チェイン オブメモリーズ』)をやったとき、MIDIで一曲叩いたんですが滅茶苦茶手間がかかって、次もこれだと大変だなと思っていたんです。そうしたら梅津が「ありますよ」って言ってくれて。サウンドの圧縮プログラムを一から書くのも大変だし、あるのなら使おうということで決めました。
もう2年も前になるのでちょっとどなたが来られたか忘れてしまいましたが、CRIさんに来ていただいたんです。そこで、バトル中で使うのはやったことがない、是非やろうということになって、色んな人を説得しました。
———「救声主」を使ってみての感想はいかがですか?
梅津: 曲を起こして、コンバートすると結果が分かってるという安心感というか、当たり前の話なんですがそう上手くいかないことも多いんです。色んなストレスが多い中で、そこだけは無条件で良いものが出来てくれる。だから面白い苦労話もないし(笑)。初めてバトルの中で使うに当たって色々な要望をしたんですが、話を持っていくと、翌日には、いや当日には返ってくる。そういうサポートの安心感があって、「まあなんとかしてくれるだろう」というのがうれしいですよね。
意外と他のミドルウェアだと納得いく音質になるまで何度も試行錯誤することもあるんです。だから、期待した音質でちゃんと上がってくるというのはうれしいです。
———ちなみにAHXは使用されたのでしょうか?
梅津: 今回はどうしても上下画面で同時にボイスを使いたくて、そうするとAHXではパワー的に厳しいというのがあります。実は、DS開発機材のシステムのストリーミングを使っています。ADXのBGMのストリーミングにAHXの2本を流せれば、と思ったのですが、少し難しくて、最後までボイスは純正でやりました。
———じゃあBGMはADXで、ボイスはDS開発機材のシステムのストリーミングを使われたのですね。共存させたケースということになりますね。
梅津: 恐らく逆のケースを想定されていたんだと思いますが。よくボイスを流すために救声主を使うのは見受けられますよね。今回は曲のポテンシャルを出すために全面的に使いました。
石元: 要するに歌をストリームでADXを使ったことに意味があるわけじゃないですか。だからといって何でもかんでもストリームにすればいいわけでもなくて、やってる人は正直DSってそんなにいい音が出るとは思ってないと思うんで、あんまり分からないと思うんです。ボーカルが乗ってるからびっくりするわけで、普通の曲を奇麗にしましたって言ってもわからないと思うんですね。音楽とか楽器やってる人はクオリティが高いと思うかもしれないけど、歌をストリームにして圧縮して1/4を使ったというのが意味のあることだと思うんです。
僕がやったから言うわけじゃないですけど(笑)。すごい面白いなとは思ってましたけどね。世に出る時に一番最初だといいなと思いましたね。
———作曲家にとって作った曲は何よりも大切なわけじゃないですか。wavベースで作られた曲をDSで流すってのはハードルが高いことだと思うんです。「救声主」は役に立てたのでしょうか?
石元: 結構いいなあと思いましたけどね。曲によって22kとか32kとかにしようかと思ったんですが全部16kになるとステレオで1分1MBって計算になります。とにかく計算はしましたね。これ以下になると少し辛いかなというところで、一番いいとろこで使えたなと思います。曲数は全部で34です。2小節のループだったりするのも含めますが。ほとんどバトルとフィールドに賭けたということです。
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