株式会社ヒットメーカーインタビュー
ゲーム史に革命を起こした「WORLD CLUB Champion Football」シリーズ
アーケードゲームという分野で、ミドルウェアが果たす役割とは?
プラットフォーム
導入製品
CRI ADX / CRI Sofdec
押見: 奥田さんはいつ頃、入社されたのですか?
奥田: 1996年に新卒採用で入社しましたから、今、ちょうど8年目ですね。思い返せば、ずっとアーケード畑を歩いてきました。
押見: 今まで、どんなタイトルを担当されてきましたか?
奥田: 一番初めに担当したのは「トップスケーター」でした。次が「ル・マン24」。その後、「クレイジータクシー」や「クラッキンDJ」を担当して、一番最近のタイトルが「WCCF」という感じです。
押見: 本当にアーケード一筋だったんですね。開発基盤で言うと、MODEL2→MODEL3→NAOMIという流れですよね。確か「WCCF」はNAOMIでしたよね?
奥田: はい、NAOMI2です。ただ、普通のNAOMIゲームと比べるとかなり異色で、システムの作り方が変わっているんです。
押見: と言いますと?
奥田: 実は、WCCFのシステムの中心にはPCが存在します。そのPCからNAOMIがプログラムをダウンロードしてくる、というシステムを採用しています。
押見: それは珍しいですね!
奥田: 珍しいどころか、他には無いシステムだと思いますよ。他になかったからこそ、初めてづくしでいろいろと苦労しましたけれど…(笑)。
押見: ちなみに、コンシューマー製品を担当された事はありますか?
奥田: そうですねぇ、100%コンシューマーオリジナルタイトルではありませんが、「クレイジータクシー」に関しては、ドリームキャストへの移植に携わりました。
押見: NAOMIからドリームキャストへの移植ですね?
奥田: はい。ですが、そもそもクレタクのアーケード版開発の時点では、まだNAOMI自体が試作機の段階だったんです。
押見: 本当に初期の頃からNAOMIを触られていたんですね?
奥田: はい。それこそ、ポリゴンが数枚しか出せないような段階から開発していました。NAOMI試作機の横にMODEL3を並べて、MODEL3で表示を確認ながら開発する、なんてことをしてましたっけ(笑)。
押見: それは大変でしたね(笑)。NAOMI向けの初タイトルとして「クレイジータクシー」に決まった「きっかけ」は何だったのでしょうか?
奥田: 新しいハードが出るタイミングって、よく「車のゲームを開発しなさい!」という指示が下りてくるんです。作りやすいし、ユーザにとっても分かりやすい、という理由からだと思います。でも、我々は普通のレースゲームを作るだけじゃつまらないと考えていたので、今までにない「ドライビング・アクション・ゲーム」を作ろう、ということになったんです。ハンドルとタイヤがあれば、まぁ、文句言われないだろう、ということで(笑)。
押見: なるほど!
奥田: そして、開発を進めていくうちに、「どこでも走りたい!」とか「道を走るだけじゃ納得できない!」という、非常にプログラマー泣かせな要望が生まれてきたんです。
押見: まさに、クレタクのメインコンセプトですよね?
奥田: はい。実際出来上がったものを見てみると、従来のレースゲームの10倍以上も広いコースが完成していたんです。実際、あのフィールドを1周まわるのに最速で走っても3分はかかるんですよ! しかも、高低差がとても多いうえに、ほとんどの場所を走ることができます。何せ、一つの街を作ってしまったわけですからね。とてつもないものを作ったものだなぁ、と、我ながら驚きましたね。
押見: ものすごいボリュームですよね。
奥田: 本当に(笑)。NAOMIのメモリが一杯になるギリギリまでマップデータを読み込ませていました。ポリゴンデータだけで10メガ超えていましたからね。そんな状態じゃ、そのままドリームキャストに移植なんてムリじゃないですか。
押見: 確かに。NAOMIのメモリ容量32メガに比べて、ドリームキャストは16メガと半分ですからね。
奥田: そうなんです。アーケード版開発の初期の頃は、移植を視野に入れていろいろと意識した作り方をしていたのですが、それがいよいよ足かせになってきて、ゲーム性の追求のためにはNAOMIに特化したゲーム作りをせざるを得なくなってしまいました。
押見: ドリームキャストとの互換ボードとは言いつつも、同じものではないですからね。
奥田: はい。それで結局、「絶対に移植はムリ」と割り切って開発を進めることになりました。
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